娘の美大受験記#6~すごい!多摩美のオープンキャンパス~

娘の美大受験

前回の話はこちらから↓

娘の美大受験記#5~志望校を変更し多摩美へ~
修学支援制度で高3の春に急きょ進路変更!多摩美大へ舵取り。さて専攻はどこを狙う?

2022年7月。
多摩美のオープンスキャンパスは午前午後の入れ替え制で、午後から部で予約を取っていた。
早朝から新幹線で東京を目指す。
多摩美がある京王線とJR線の橋本駅は、神奈川県。
最寄り駅は神奈川県で、学校は東京都八王子市という立地、県境にあるのだ。

橋本駅で早めにお昼ご飯を済ませたが、多摩美行きのバスにはすでに人がずらりと並んでいた。
まず学校に着くと屋外の屋根付きの校舎前の机の上に人が群がっている。
よく見ると、学校のコース全部載った学校案内とは別に、専攻別の案内が置かれているのだ。
これが、専攻によってサイズも形も紙質もバラバラ。
大きさで勝負!とばかりに異常に大きいものまである。

どれも一目を引くようにその専攻の個性が出ているのが面白い。
多摩美出身の先生に、パンフレットをもらってきてほしいと言われたと娘が言っていた謎が解けた。

多摩美の専攻別パンフレットや入試案内、TAMABI NEWS、テキスタイル誌mA

さらに、過去から現在までのTAMABI NEWSなどもずらりと並んでいて、入るまでに大荷物になってしまう。
資料を入れる用に可愛いエコバッグももらった。
これは、気に入って私が普段使っている。
デザインは毎年変わるようだ。

テキスタイル棟に行くまでに、メディア芸術専攻も見るが、面白すぎて、これじゃあ時間がなくなってしまう!と慌ててテキスタイル棟へ。

多摩美のテキスタイル棟

テキスタイル棟では作品展示はもちろん、先輩が沢山待機しており、機織り体験をさせてもらったり、先輩を囲んでの座談会や、教授からの話、染色場の見学(アジア最大とか)など、本当に盛りだくさんで、もう全員一丸となって一緒に学ぶ仲間を探しているというような温かい親密な雰囲気が感じられた。

なんとミナペルホネンの皆川明氏が2022年から専任教授に就任し、本来なら会場にいるはずが、「つづく」の展覧会の青森県立美術館での開催初日と重なり、オーキャンには来られず。代わりに、ビデオレターが届いており、会場で流されていた。

「皆川明さんに教えてもらえるんですよ?すごくないですか?」と学生が興奮気味に話しており、本当にタマテキは夢のような学校だと思った。

教授との個別相談会でも、時間制限もなく、聞きたいだけ色んなことを聞くことが出来た。
失敗だったのは、みんな作品やポートフォリオを持って来てたこと。
これまで、関西の芸大美大のオープンキャンパスにも持って行ってなかったので、そういう頭がなかったが、みんなアドバイスをもらうのに作品を持参していたのだ。
これは本当に残念だった。

それでも諦めず、スマホで撮影した作品を見てもらい、教授にアドバイスをもらうことができた。
その教授は本当に優しくて、真摯な方で、それだけで親子共にタマテキ(多摩美のテキスタイル)のファンになった。

教授への質問
Q.総合型選抜の作品3点はどのようなものが望ましいか。
A.自信作を持ち込むこと。テキスタイルに寄せていなくて良い。油絵でも立体でも作った服でも何でも良い。

Q.ポートフォリオでも良いのか。それで1点になるのか。
A.ポートフォリオを3点のうちの1点にしても良いが、面接の制限時間があるので、その時間内に3点の作品の説明をする必要がある。なので、時間的に厳しいかもしれない。

Q.卒業生はどんな仕事に就いているか。
A.80%が入学する時にファッションに興味があったからテキスタイルを専攻したと言うが、ファッションデザイナーになる人は1割に満たない。テキスタイルはファッションだけでない、ということを4年かけて学び、繊維や色の専門家として車メーカーに就職する人など求人も進路も多種多様。

  • 教授から言われたこと
    ・なぜ多摩美のテキスタイルに行きたいかを良く考える
    ・私は何をやりたいのか、つきつめる
    ・考えを持っていると面接がスムーズにすすむ
    ・きれいな好きな色の組み合わせをスケッチブックに塗る
    ・町で見かけた素敵なファッション、色の組み合わせなどを書き留める
    ・自分の好きなものを集めてそれを知ること
  • 多摩美の当日の試験対策の絵を見せて言われたこと
    ・良く描けているが、デッサンは目の前の事実をしっかり描くこと。かっちりりたもの、瓶、しっかりと形を見ること
    →合格再現作品などでは、みんな凝った構図だったため、わざと凝った構図にしていた。
    例えばグラスは飛んでいるような構図とか。
    テキスタイでは、毎年「花と手とモチーフ」のデッサンが出題される。
    ・色彩構成は躍動感などもっと遊ぶ→色彩構成ははじめたばかりでかなり硬い感じだったため。

なぜこれほど記憶しているかと言えば、メモを取っていたからだ。

そして、先輩との座談会もすごく良かった。
高3まで運動部を全力でやり、そこから美大を目指し絵を勉強して合格した方や、中学校から美大に行くと決めて画塾に通っていたが多摩美のテキを受けることを決めたのは高3の12月という方など本当にリアルな生の話が聞けたのだ。
その中で、総合型選抜で合格したという方がいた。

座談会が終わってから、その人に個人的に話が聞きたい!と娘が突進していった。
それは、持ち込み作品は何だったかということ。
窓枠ぐらいの大きい油絵と手作りの服などを持ち込んだとのことだった。
娘と同じで高校は美術科だったそう。
話しをしていると関西弁だったので、関西出身の方ということがわかり、どうやって作品を東京まで持って行ったのかも聞くことが出来た。

新幹線で絵を担いで一人で持って行ったということだった。
そう、東京近郊の場合、親に門まで車で送ってもらうことも出来るが、遠いとそうはいかない。
1mを超える大きな絵を持って、さらに画材と宿泊の荷物を持って電車に乗らないといけない。
荷物はホテルに送ることも出来るが、画材などは万が一着かなかった場合シャレになれないので、持参するしかない。
相当な荷物だ。
そして、門から面接会場までは親族でも入れない。どうしても一人で運べない場合はスタッフにお願いして手伝ってもらうことになる。

オープンキャンパスは本当に行って良かった。
娘も私も多摩美のテキスタイルに心から「ここだ!」とビビビときた。
学生も生き生きしていて、「テキスタイル、楽しいですか?」と聞くと、みんな「めちゃくちゃ楽しいです!!!」と満面の笑みなのだ。

そして、関西出身の先輩に、他に受験した学校を聞くと「多摩美のテキスタイル一本です!受からなかったら浪人するつもりだった!」と。

そんなに「ここに入りたい!!」という熱意を持った人が受けにくるんだ、と思った。
美大は併願が当たり前だと思っていたので。
よく多摩美の併願校になる武蔵美には、テキスタイルはなく、もっと大枠から入って途中の専攻でテキスタイルに別れる形になるのだ。

前年の入試を見ていたら、定員に対して沢山取っているので、教授に質問したが、やはり、「ここにきたいという熱意のある子を取りたい」という思いがあるようだった。

その日の天気は雨で冴えなかったけれど、娘も私も興奮していて「想像以上に良い!」「テキスタイルに決まりだ!」と心は晴れ渡っていた。

余談だが、11月の入試日程で多摩美の近くのホテルは6月20日頃には押さえていた。
さらに2月の予約も入れようと思ったら、すでにこのホテルは予約でいっぱいだった。
みんなまず「ホテル」を押さえるのだ。
特に2月は毎年受験日が大雪になる。
徒歩で行けるホテルは貴重な存在だ。
取りあえず、駅前のホテルだけはおさえていた。

2月の入試は、学科と実技で2回に分けて東京へ行くことになる。
そのまま連続で宿泊もメンタルや食事などを考えると一旦帰った方が良いと判断した。

こんなことを考えるともう絶対に11月の総合型選抜入試で受かるのが理想でしかない。

その日は銀座のホテルに荷物を送っていて銀座で泊まる。
夜は壁画が美しい銀座ライオン銀座七丁目店に行った。

銀座ライオン銀座七丁目店

まるでタイムスリップしたような店内に親子でテンションが上がり、疲れも吹っ飛ぶ。
夏の夜は気持ち良く、銀座は夜歩いても楽しい。

受験生だからと言って、旅を諦めることはなくいつも通り。
翌日は画材を買って、シャネル展を見て、蔵前でスカイツリーを見ながら夕食。
蔵前から浅草まで歩き、夜の浅草寺に参拝し、タマテキに受かりますようにとお願いする。
上野に泊まり、翌日は国立西洋美術館へ。
色々なものを見ることは、絵を描くことと同じぐらいすごく大事だと思っている。