娘の美大受験記#11~崖っぷち美大入試面接~

娘の美大受験

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娘の美大受験記#10~崖っぷち美大入試初日~
美大入試は学校によって入試に使用される用紙が異なる。そのため、各大学の入試要項は早い目に熟読し、理解して試験対策に臨む必要がある。多摩美のテキスタイルの入試ではクレセントボードが使用される。

面接時間は、前日の試験時に教えてもらえるため、帰りの新幹線を何時に取ればよいかさっぱりわからず。
当時はスマートEX(JRのアプリ)も使っていなかったので、帰りは学割で取れば良いかと思っていたが、同行する旦那は正規料金。
思ったよりも高くついた。
スマートEXでWEB予約すると変更手数料なしでスマホから簡単に後の新幹線に変更出来るので、そうすれば良かった。スマートEXは学割はきかないが、早割がある。

結局、面接は午前中だった。

重たい油画作品をお父さんに持ってもらっていたのを門で受け取り別れる。
門から先は受験者以外の出入りは禁止だ。
ここからは多摩美の坂道を一人で作品を抱きかかえ登っていかないといけない。

時間に余裕を持って会場入りしたつもりが、着くとみんなもう既に作品を出して並んでいた。
人や作品をかき分けながら、列の中、空いている自分の順番のところへ滑り込む。
バッグから作品を取り出す時、妙に余裕があり、周りの人の作品に当たらないように笑顔で周囲に気づかいしながら出すことが出来た。

そう、何だろう。めっちゃ余裕ある

昔から本番にわりと強い。
そんな感じでびっくりするほど緊張せずにその場で待つことが出来た。

そんな中、入ってすぐに度肝を抜いた。
なんと等身大の羊毛フェルトの人形を3体も持ち込んでいる子がいたのだ。

こんな大きい作品どうやって作ったん?そしてどうやって運び入れたん?

※持ち込み作品でどうしても一人で運べないものは、スタッフが入口で手伝ってくれるようだ。

他には自作の服を持ち込んでいる人もおり、トルソーは借りれるようだった。

実は、あの7メートルのマフラーをどうやって面接に持ち込むか、私は娘が東京に行ってから不安に駆られていた。
なんなら、一日目の試験の間に旦那にトルソーを買ってきてもらうことも考えたぐらい。
でも本当に準備が悪い。今更もがいたって仕方ない。

結局娘は、高校の制服の上に「7メートルのマフラー」を首にぐるぐる巻きにして面接の部屋へと入ったのだ。
油画の2点(40号と50号)は、面接会場のイーゼルにセットされていた。
個人面接で、入るとずらりと教授が並んでいる。

入って名前を言うとすぐに一人の教授が「あ、それが志望動機に書いていた7メートルのマフラーですね!」と声をかけてくれた。

信じられないぐらい長いマフラーを不自然なまでに巻いていたのだ。
しかも、鈴やら音のするものも付けているので歩くと音まで鳴る。
つかみはオッケー!

「マフラーを外してここへ置いて下さい」

と言われ、教授の前のテーブルに置く。

昨日の実技はどうだったか、持ち込み作品についてのPR、高校ではどんなことをしてきたか、テキスタイルの志望動機等を聞かれたそう。

「昨日の実技は、デッサンは出来たと思いますが、色彩表現は反省点もあります。ですが、今の私が出せる力は全て出し切りました!」

持ち込み作品についてはそこまで深く質問はされなかったそう。
テキスタイルの志望動機について少し鋭い質問が飛んだが、落ち着いて答えることが出来た。
全ての教授に顔をまんべんなく向けながら、笑顔ではきはきと話終えて、最後の質問。

「最後に話したいことはありませんか?」

私は今、果物を切って腐らせることにハマっています。
受験対策のモチーフの果物を切って置いておいたところ、カビが生えてきたのです。
そのカビがすごく綺麗だったのです。
カビというのは普通は汚いイメージかもしれませんが、紫やブルーのような本当に綺麗な色のカビが生え、毎日それを見ることがマイブームです。
大学に入ったら、その美しいカビをテキスタイルを使って表現したいです。
例えば、この部屋の天井からこうカビが生えていくようすをテキスタイルを使って表現したりしたいです。

以上で面接を終わります。
今日はありがとうございました。


教授たちは、突然のカビの話にびっくり!
「カ、カビ・・・?」「カビかぁ・・・」とみんな目を丸くして呟いていたそう。

メイクバッチリの女子高生が、カビの美しさについて目をキラキラさせながら話すのだ。
突然の展開にびっくりするのも当然だろう。
私も娘から、ニヤニヤと「最近果物を腐らせてカビを生やすことにハマってるねん」と初めて聞いた時は、この子大丈夫か?正気か?と思ったものだ。

↓以前このカビの話を聞いた

娘の美大受験記#9~出願からの受験準備が整いません!~
美大受験の総合型選抜入試の志望動機にてこずりながらも何とか出願最終日の消印をもらい、無事に出願を終える。その中で併願校の受験や、また、本命の入試準備に悪戦苦闘。ドラフティングテープって何?いよいよ入試。

 

面接を終えて出ようとしたときに、自分の後ろに人がいたのに気付く。
後2分、後1分、終了、というように紙芝居のような紙を持ったスタッフがいたそうだ。
カウンター係というやつだろう。

何はともあれ、全て終わった。
面接は緊張せず楽しめたという。
いつもギリギリでハラハラするけど、いざという時は本番に強い娘だ。
ピアノの発表会でもそうだった。
いつもミスするのに発表会ではノーミスで弾ききり自分でも驚いていた。

私はこの最後にカビの話をしたと聞いた時、きっと今頃「関西のカビの子」って教授に言われてるで!と言って笑っていた。
個性的な人を取りたい、という趣旨にピッタリだったんじゃない?
面接は自信あると言っていた。
これは一日目が悪くても、もしかしたらいけるかもしれない。
いやいや、期待しすぎては良くない。
試験が終わったら終わったでまた違う悩みが出てくるのだ。

この日、嬉しいことがあった。
東京で旦那の京都精華大学時代の友人と食事をした時に一人からプレゼントをもらったのだ。
私も良く知っているその同級生は、前日にも旦那と会って話を聞いており、それを元にマンガを描いてプレゼントしてくれたのだ。

白塗りのところには娘の名前が入っている。
油画を背負い、例のマフラーを巻いている娘の漫画!
右上のおじさんはうちの旦那(笑)
絵を描ける人ってすごいなぁ。さすがマンガ専攻卒業!
彼は現在似顔絵師であり、今年は神社の絵馬の絵も描いたそう。
昔からいいヤツだ。
受験の記念、宝物になった。

やれることはすべてやった。
あとはもう結果発表を待つだけ。
祈るだけだ。