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※1年前の話です
合格した。
やった!これでもう受験からは解放だ!
そう思ったのも束の間、翌日にレターパックが届いた。
入っていたのはA4の紙2枚と学費の振込票。
A4の紙の一枚は合格通知書。
そしてもう一枚にはQRコードが載っている。
入学の説明などは一切ない。
全部QRコードを読んでWEBサイトに飛んで、自分で必要書類をプリントして送るという感じらしい。えらいあっさりしている。
一つ目のQRコードは入学手続きに関するもの。
ふむふむ。
色々と揃えないといけないものがあるなぁ。
そして学費。初年度納入額が日本一高い美大と言われているだけあって、入学金と前期の授業料だけで100万を余裕で超えていた。
二つ目のQRコードは、入学前プログラムだという。
いわゆる課題=宿題だ。
読む込みとテキスタイル専攻はA4用紙2枚にぎっしりに課題が書かれているではないか。
その量というのがすごくて、そして提出期限も2回に分かれているのだ。
普通の大学でも課題は出ることは多いと聞く。
でも量が、量が半端ないのである。
娘は「タマビは優しいなぁ。だって2回目の提出期限が3月1日やから、3月は引っ越しとかで忙しいから課題がないということやなぁ。」と呑気に言っている。
これはヤバいと瞬時に感じる。
え、これマジですごい課題の量やねんけど、感想それなん?!
毎日課題もあるし、(クロッキー、雑誌の色の切り抜き、色の表現、絵の具で野菜や花や布を描く、風景写真撮影、新聞を切り抜いてテキスタイルの力で解決する方法を提案)鉛筆デッサン、色彩構成とバラエティ豊富である。
この課題の文章を理解するのに何日もかかり、やりながら途中で間違っていたことに気づいたりとだいぶ苦労した。読んで理解出来ますか?!
これをスケッチブックにどの順番でどのように構成していくかが難しく、娘と一緒に悩みまくった。
取りあえず、一回目の提出が1月10日
B4のスケッチブック2冊(1冊20枚)と鉛筆デッサン(一回目の分)、色彩構成(一回目の分)
合格してそれで終わりじゃないんだ。
当たり前だ。
それは始まりだったのだ。
美大への合格はもう翌日から入学へ向けてスタートしているのだった。
一般入試の2月までの3か月間。
この間にぐんと絵が伸びると聞く。
11月に合格して遊びほうけていたら、2月の入試で合格した子たちに大きな差がつくことになるのだ。
この課題が届いた日こそ、スケッチブックを買ってやる気に満ち溢れていた娘だったが、あっという間にそんなことは忘れて遊び出した。
学校にも行ったり行かなかったりと急にすべての糸が切れたよう。
一週間に3回もUSJに行くなど尋常じゃない遊びっぷりだった。
「課題はやってるの?
日々やっていかないと間に合わないよ!」
そんなことをグチグチと横で言ってもどこ吹く風で、本当に適当にしかやらない。
一日に何枚もまとめて描いたり。
「ほっておいたら良いんじゃない?」
おっしゃる通り。
でも私は娘の性格を誰よりも知っている。
絶対にギリギリにしかやらなくて、間に合うかどうかの瀬戸際になるのが目に見えているのだ。
でも、いくら口を出したところで「うるさいなぁ。また言ってるわ。」程度にしか思ってもらえず、私の心配は増すばかり。
せっかく合格したのに、親子関係が微妙になるぐらい私は不安と心配と苛立ちで毎日苦しくてしんどい日々を過ごすことになったのだ。今思えばその苛立ちは受験以上だった。
案の定、課題はギリギリになり、明日必着で今日中に出さないといけないという日に、絵の具でまだ色を塗っているような状態で、ドライヤーで必死に乾かすぐらい時間がなかったのである。
もうタイムアウト!半乾き状態で梱包し、宅急便屋に持ち込んだのである。
私はもうハラハラドキドキ。
娘の方はというと、「間に合って良かった~!間に合ったんだから別にいいやん!」とケロリ。
何の反省の色もないのである。
そして、まだ二回目の課題があるにも関わらず、また放置。トホホ・・・
頼むからもうちょっと余裕持ってやってよねと親としては思うのである。
でも私も子離れ出来ていなかったんだと今になったらわかる。
苦労させたらいい、後で大変な思いをするのは本人。
頭ではわかっていても出来ない。
娘を信じることが出来ず、口出ししないと出来ないと決めつけていた。
結局、二回目の課題も何とかギリギリに終わり、(内容はやっつけ仕事そのものだったけど)私の苦しい苦しい3か月半が終わったのである。
その間に、2月の一般試験用に予約していたホテルのキャンセルや、東京へ行きアパートを契約したり(契約はWEBで内覧だけ行った)、家電や家具を調達したりもした。
あまりにも燃え尽き症候群状態だったので、卒展を見に行こう!と誘って1月に多摩美のキャンパスまで行ったりもした。
「合格したら終わりやと思ってるんちゃうか?卒業出来ないんちゃう?」と旦那が心配するぐらいぼーっとしていた。
ほんまに夢みたいやなぁ。
だって多摩美に合格してんで!
その繰り返しで、そこから出れなくなっていたのである。
最後の最後までその状態が続き、あっという間に入学式を迎えることになった。
ちなみに、すっかり忘れていたことがある。
併願で受験していた京都精華大学の合格発表。
多摩美より先に受験したのに、発表は後だったのだ。
娘が思い出してWEB発表を見ると合格していた。
後で調べるとなんとこちらの方が倍率が高く3倍以上だった。
そして合格通知書と一緒にパンフレットなどもいっぱい送られてきた。
でももうこちらには行かない。
合格したのに行かない場合はどうするのだろう?と思ったら、入学手続きをしないだけで良いらしい。
つまり、放置するのだ。
ちょっぴり胸が痛んだが、もし11月に多摩美が落ちていたらこちらの入学金を払わないといけなかった。
そして2月に多摩美に合格したら、京都精華大学へ払った入学金は捨てることになるのだ。
20万~30万のお金だ。
それだけでも本当にお金がかからず合格出来て良かったと思った。
受験は本当にキャッシュがいる。